第55回 下水道研究発表会 開催報告

①開催概要

平成30年7月24日(火)~26日(木)に、北九州市西日本総合展示場において、「第55回下水道研究発表会」を開催しました。発表当日は、日本語口頭発表部門391編、英語口頭発表部門32編、日本語ポスター発表部門19編、英語ポスター発表部門6編の発表があり、総聴講者数は2,172名でした(特別講演の聴講者数を含む)。

②口頭発表部門

口頭発表部門は、日本語発表391編の発表があり、その内訳は、「特定課題セッション」として6セッション・56編、「通常セッション」として11セッション・335編でした(写真-1)。2年目となります英語口頭発表部門では32編の発表がありました。


写真-1 口頭発表の様子

聴講者数の多かった上位セッションは、表-1の通りです。
各発表者の当日のプレゼンテーション技術等については、担当座長による審査を得ましたので、今後本会設置の下水道研究発表会企画運営委員会(委員長:京都大学大学院工学研究科 田中宏明教授)の委員による論文の内容に関する審査結果と併せて、優秀者に対する表彰を後日行う予定です。

表-1 聴講者の多かった口頭発表セッション
  セッション名 入場者数 開催日
1 N-9-1 水処理技術(1) 126名 7月25日(水)
2 N-7-4 管路(維持管理)(4) 124名 7月25日(水)
3 N-1-6 経営・計画(6) 107名 7月26日(木)
3 N-10-3 汚泥処理技術(3) 107名 7月26日(木)
5 N-7-2 管路(維持管理)(2) 106名 7月24日(火)
6 N-6-1 バイオソリッドの利活用/りん等有用資源の回収(1) 105名 7月24日(火)
7 N-9-4 水処理技術(4) 101名 7月26日(木)

③ポスター発表部門

ポスター発表部門は、日本語ポスター発表19編、英語ポスター発表6編の発表がありました(写真-2)。
その中から下水道研究発表会企画運営委員会の委員と第2日目(7月25日)に来場された口頭発表セッションの各座長の審査を得た後、厳正なる審議の結果、日本語ポスター発表から最優秀賞1編、優秀賞3編、英語ポスター発表からは最優秀賞1編が選出されました。各賞の結果は、表-2(優秀賞は氏名のあいうえお順)の通りです。

表-2 第55回下水道研究発表会 ポスター発表セッション 審査結果
日本語ポスター 発表題名 所属 受賞者氏名
最優秀賞 体験型学習を取り入れた下水道教育について
(小学校訪問授業の実施)
北九州市 加茂 華子 氏
優秀賞 β-グルクロニダーゼを用いた新規簡易大腸菌数測定法の開発 北海道大学大学院 菊地  凱 氏
汚水圧送管路への鉄含有硝酸塩添加による硫化水素抑制効果について 第2報 日鉄鉱業(株) 戸嶋 達郎 氏
窒素・リンの雨天時平均流出濃度を用いた年間総負荷量の推計 国立研究開発法人
土木研究所
平山 孝浩 氏

英語ポスター 発表題名 所属 受賞者氏名
最優秀賞 Risk communication about recycled water: How do people realize and agree using recycled water? 京都大学大学院 小田 実紀 氏

また、ポスター発表セッションの表彰式を、7月26日の11時45分~12時に、エントランスロビー(ポスター発表会場)で行い、田中委員長から各受賞者へ表彰状が授与されました(写真-3)。


写真-2 ポスター発表の様子


写真-3 ポスター発表セッション表彰式の様子

④特別講演

7月24日の11時~12時に、北九州国際会議場メインホールにて、九州大学高等研究院 特別顧問 楠田哲也氏による特別講演が行われました。テーマは、「西から拓く下水道 ―イノベーションと国際化―」で、来場者は150名でした。楠田氏は、長年にわたり下水道業界をけん引されておられて、下水道の歴史から始まり、九州からの下水道情報発信、下水道のイノベーションや下水道の国際化について幅広い知見から講演いただきました(写真-4)。


写真-4 特別講演の様子

⑤パネルディスカッション

7月24日の13時~16時30分に、同じく北九州国際会議場メインホールにて、「下水汚泥利活用による事業化の取組について」というテーマで、パネルディスカッションが行われました。来場者は178名で、学識者、地方公共団体、民間事業者など多数の参加をいただきました。
下水汚泥利活用においては、平成27年度の下水道法改正により燃料化や肥料化への努力義務化が図られてきましたが、有効利用率はまだ低いレベルに止まっている状況であります。
このため、国交省に最新の動き、自治体に先進事例として、汚泥処理の従前の課題、それら課題の解決として場外発電、燃料化施設、焼却廃熱回収等を選定した経緯について講演いただきました。

その後のパネルディスカッションにおいては国交省をコーディネーターとして、
  1. ① 汚泥資源化(セメント原料、堆肥化、リン回収など)の課題と対応について
  2. ② 汚泥エネルギー利用の課題と対応について
  3. ③ 消化ガスの場内利用とFIT制度等を活用した場外利用の比較について
  4. ④ 汚泥燃料化技術の比較について
  5. ⑤ エネルギー利用の拡大に資する焼却炉の新技術について
  6. ⑥ 資源、エネルギー利用の拡大に係る展望について

など6つの論点に関して活発な議論が行われました。
コーディネーター・パネリストは、表―3の通りです(写真―5)。
※本パネルディスカッションの議事詳細は「再生と利用」159号にて掲載予定です。
表-3  パネルディスカッションのコーディネーターとパネリスト
コーディネイター 国土交通省水管理・国土保全局下水道部
下水道国際・技術調整官
阿部 千雅 氏
パネリスト 北九州市上下水道局下水道部施設課長 南雲 伸司 氏
東京都下水道局建設部設備設計課長 佐藤  勝 氏
熊本市上下水道局水再生課主査 八木 三喜 氏
札幌市下水道河川局事業推進部下水道計画課
事業担当課長
安田 卓生 氏
宮崎市上下水道局下水道施設課主幹 矢野 弘訓 氏



写真-5 パネルディスカッションの様子

⑥交流会

7月25日の17時30分~18時30分に、D展示場(口頭発表第1会場)/AIM3Fにて、交流会を開催しました。この交流会は、下水道技術等に関して自由に意見交換を行っていただくことを目的として、発表者、聴講者、座長、下水道研究発表会企画運営委員等、下水道研究発表会の参加者を対象に行ったものです。研究機関、地方公共団体、海外の下水道事業者といった幅広い職種の方にご参加頂き、貴重な意見交換の場となりました。参加者は、66名でした。(写真-6)。


写真-6 意見交換の場となった交流会の様子

⑦おわりに

今年は、20年ぶりの九州での開催ということで、これまで研究発表会になじみのない方にも多数ご参加いただけたかと思います。来場者も会員の方だけでなく非会員の方や海外からの来場者もあり、盛大に開催することができました。
次年度以降もPRに努めてますますの活性化を進めるべく運営に務めて参ります。
最後になりますが、第55回下水道研究発表会にご参加された皆様、並びに本研究発表会にご協力いただいた関係者の皆様方には厚く御礼申し上げます。次回の「第56回下水道研究発表会」は、2019年8月上旬に横浜市にて開催いたします。来年度のご参加もお待ちしております。