下水汚泥の緑農地利用
下水汚泥は、窒素やリンの含有率が高く、70%前後を占める有機分は分解しやすく、また、脱水すれば扱いやすい等の利点を有しており、大量かつ安定的に入手できます。
このため、緑地や農地を有する地域を中心に、脱離液中からのリンはMAPとして、コンポストや乾燥汚泥は肥料として、炭化物や焼成物は土壌改良剤や園芸用土壌として利用されているところです。
今後も一層利活用を進展かつ維持するためには、地域住民等と一体となった取り組みを積極的に行う必要があります。
下水汚泥がよく分かるQ&A
下水汚泥コンポストと他の有機質肥料の代表的な組成は表-1に示します。窒素はダイズやナタネの油かすよりは少ないものの、豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥と同程度に多く含んでいます。また、窒素は土壌中で農作物に早くから吸収されやすい形態になるので、下水汚泥コンポストは即効性の有機質肥料と見なされます。リン酸は鶏ふん堆肥、豚ふん堆肥に次いで多く含んでいます。カリはほとんど含まれていません。また、石灰系の汚泥コンポストは他の有機質肥料に比べて多量の石灰を含んでいますので、酸性土壌のpH矯正の場合に改良資材としても有効に利用できます。さらに、下水汚泥コンポストは、一般に、植物の正常な生育に欠かせない亜鉛や銅などの貴金属の含有量が比較的高いことも特徴です。但し、土壌中に高濃度に集積すると生育障害を起こす可能性があります。
このように、下水汚泥コンポストは他の有機質肥料と異なった性質があり、その性質を生かして使用することが大切です。
主な作物に対する効果は次のとおりです。
①水稲に対する効果
下水汚泥コンポストの肥効を化学肥料の30%と想定して科学肥料を減らした場合の試験結果を表-2に示します。別に寒冷地である岩手県の結果でも同様に対照区並みの収量が確保されています。
②野菜に対する効果
化学肥料に下水汚泥昆ぷストを上乗せした試験では、葉菜類のキャベツやホウレンソウで表-3に示すように増収効果が見られています。
消費者の方々にいかに農作物をおいしく味わっていただくかは、重要な肥料効果のひとつです。そこで、下水汚泥コンポストを用いて栽培された農作物とそうでない農作物の味を一般の方々に食べてもらい、よりおいしいと感じた方に投票する方式で、農作物の味への効果を実証したところ、下水汚泥コンポストを用いて栽培した農作物が多くの表を集め、下水汚泥コンポストが農作物の味にも効果的であることが実証されました。概要、結果の詳細はこちらをご覧ください。
肥料取締法で登録された下水汚泥を原料とする肥料は、法による重金属の規格を満足しています。重金属には鉄、銅、亜鉛などがありますが、それらは植物の正常な生育には欠かすことができない元素で、水に溶けているものは積極的に吸収されます。
ある調査結果によると、穀類では穂への影響はわずかしかなく、ダイズでは茎葉部において亜鉛の増加は見られますが、子実部においての影響は明確ではありません。キャベツについては銅の増加は見られますが、その他の重金属では明確ではありません。カンショについては銅、亜鉛で茎葉及び可食部ともに対照区と差が見られない結果を得ています。これは、下水汚泥の施用により土壌のpHが上昇したためと考えられます。
なお、農用地土壌の保全のための管理基準が、ある調査により亜鉛について自然の土壌に含まれる量を考慮して暫定的に定められていますが、富士火山灰系の土壌はその基準を超えているものであり、必ずしも作物への影響等から定められたものではありません。
場所や販売仕様等により、無料や有料など価格が異なりますが、具体的な価格は有効利用一覧表をご参照ください。
日本下水道協会が発刊している「再生と利用」では、No.158号(2018 vol.42)より、日本全国の名称のついた汚泥肥料について、入手方法や利用者の評判等さまざまな情報について順次紹介しています。「再生と利用」についてはこちらをご覧ください。